ELITE LADIES CLUB · STORY · 彼女の夜

第5章 · ファイル

三度目の扉を開けると、お茶はもうそこにあった。熱く、空気にはイランイラン、灯りは前回より少しだけ暗く。誰も、今日はどうしたいかとは尋ねなかった。

第5章 · ファイル

何も言わなくていい

セラピストは彼女のファイルを開いた。左肩が右より張っている。圧は三段目がちょうどいい。最近眠りが浅い。後半は音楽を切る。横になりながら彼女は思った。覚えられているというのは、こういう感覚なのだ。自分を説明し直す必要も、他人になり直す必要もない。

この回、彼女は眠った。疲れ切って落ちる眠りではなく、安心して浅く眠る、いつでも起きられるのに起きたくない眠りだった。目覚めたとき、お茶はまだ温かく、窓の外はすっかり暗くなっていた。

ファイルの外側

コンシェルジュは見送りながら、何気なく付け加えた。「再来週、出張ですね。着いた夜の枠、先に押さえておきましょうか?」彼女は一瞬、虚を突かれた。それは茶席のそばで一度だけ口にした旅程だった。

彼女は笑って、押さえておいてと言った。扉を出ると夜風は冷たく、彼女はマフラーを少しだけきつく巻いた。だが心のどこかは温かかった。この街に、彼女を覚えている場所が一つある。

まだ決められなくても、大丈夫。

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